朝、カーテンの隙間から光が差し込む。
学校へ行く時間がとっくに過ぎているのに、お子さんは布団の中から出てこない。
「今日も行けないんだ…」
そう思った瞬間、あなたの胸にはどんな感情が押し寄せてきますか?
不安、焦り、罪悪感、そして言葉にできない重たさ——。
「このままで大丈夫なのかな」
「将来はどうなるんだろう」
「学校に行かないと、人生が終わってしまうんじゃないか」
そんな思いで夜も眠れず、スマホで「不登校 将来」「不登校 後悔」と検索してしまう日々。

↑これは、過去の私です…
あなたは一人じゃありません。今この瞬間も、同じ思いを抱えている親御さんが全国にたくさんいます。
でも、ここで少しだけ視点を変えてみませんか?
学校に行けない時間は、決して「止まっている時間」ではありません。
それは、お子さんの脳と心が、これから先の人生を生きるための新しい「土台」を作っている時間なのです。
この記事では、不登校を経験している親子に向けて、「学校に行けない時間の本当の意味」と、「この時期だからこそ育つ大切な力」についてお伝えします。
私自身、多くの不登校の子どもたちやその家族と向き合ってきました。そして確信しています。
不登校は、終わりではなく、始まりです。
「学校に行けない=人生終わり」という誤解を解く
多くの親が抱える恐怖
「学校に行けないと、この子の人生は終わってしまう」
そう感じてしまうのは、決してあなただけではありません。
なぜなら、私たちの多くは「学校に行くのが当たり前」という価値観の中で育ってきたからです。そして、その”当たり前”から外れることへの恐怖は、想像以上に大きいものです。
でも、冷静に考えてみてください。
- 学校に行けなかった時期がある人が、幸せに生きているケースは数え切れないほどあります
- 著名な経営者や作家、アーティストの中にも不登校経験者はたくさんいます
むしろ、その経験があったからこそ、独自の視点や強さを持つようになった人も多いですよね。
脳科学が教えてくれる真実
ここで、脳の仕組みについてお話しします。
人間の脳、特に前頭前野という部分は、「考える力」「判断する力」「未来を描く力」を司っています。
そして実は、この前頭前野が最も成長するのは、困難や葛藤に直面し、自分なりの答えを探そうとしているときなのです。
つまり、
「なぜ自分は学校に行きたくないのか?」
「自分はどう生きたいのか?」
「何が自分を苦しめているのか?」
こうした問いに向き合っている時間こそが、脳を最も深く成長させる時間なのです。
不登校は「脳のリセット期間」
学校に行けない時間を、パソコンで例えるなら「再起動とアップデート」の時間です。
重たくなったシステムを一度休ませ、不要なプログラムを整理し、新しいソフトウェアをインストールする。そんな大切なメンテナンスの時期なのです。
だから、この時間は、
- 止まっているのではなく「準備している」
- 遅れているのではなく「深めている」
- 終わっているのではなく「始まっている」
そう捉え直してみてくださいね。
不登校の現実【痛みと苦しみに寄り添う】
親の心は引き裂かれそうになる
でも、理屈ではわかっていても、現実はとても辛いですよね。
朝、子どもが起きてこない。 着替えない。 部屋から出てこない。
そんな日が何日も、何週間も、何ヶ月も続く。
「今日こそは」と期待しては裏切られ、また次の日も同じことの繰り返し。
夜、子どもが寝た後、一人でリビングに座って涙が止まらなくなる。
そんな経験をされている方も多いと思います。

周りからは、
「甘やかしすぎじゃない?」「もっと厳しくしないと」「うちの子は毎日元気に通ってるよ」
そんな言葉が聞こえてくるんですよね…涙
子どもも苦しんでいる
そして、忘れてはいけないのは、お子さん自身も深く苦しんでいるということです。
「行きたいのに行けない」
「みんなは普通にできているのに、自分だけできない」
「親を悲しませている自分はダメな人間だ」
こうした自責の念に、毎日押しつぶされそうになっているのです。
布団の中で、どれだけの涙を流しているか。 心の中で、どれだけ自分を責めているか。その痛みは、本人にしかわかりません。
それでも、焦らなくていい
この現実の辛さを、私は決して軽く見ているわけではありません。むしろ、その痛みの深さを知っているからこそ、お伝えしたいのです。

焦らなくていい。
無理に”戻す”必要はない。
今、目の前にあるこの時間を、「かけがえのない成長の時間」として受け止めてほしいのです。
子どもが家にいる時間は、確かに休息の時間です。 でも同時に、それは「心の筋肉」を育てている時間でもあります。
目には見えないけれど、子どもの中では確実に変化が起きています。
そして、親が落ち着いて見守る姿勢を見せることで、子どもは少しずつ安心を取り戻し、再び世界に向かう力を取り戻していくのです。
だから、まずは深呼吸をして、こう伝えてあげてください。

「今日も一日、生きていてくれてありがとう」
それだけで十分なんです。
学校に行かない時間に育つ「5つの力」
不登校の期間に、実は子どもの中で育っている力があります。それは、学校という枠組みの中では気づきにくい、でも人生において本当に大切な力です。
育つ力① 自己理解力 「自分はどんな人間か?」を知る
学校に通っていると、毎日が時間割に追われ、周りに合わせることで精一杯です。
でも、その流れから離れた時、初めて子どもは「自分」と向き合う時間を持てます。
- 自分は何が好きなのか?
- 何をしているときに心地よいのか?
- どんな環境が自分に合っているのか?
- 何が自分を苦しめるのか?
こうした自己理解は、将来的に:
- 自分に合った仕事を選ぶ力
- 無理をしない人間関係を築く力
- 自分を大切にする力
につながっていきます。
育つ力② 思考力 「なぜ?」を深く考える力
不登校の子どもは、多くの時間を「考える」ことに使っています。
「なぜ自分は学校に行けないのか?」 「世の中の”普通”って本当に正しいのか?」 「人はどうやって生きるべきなのか?」
こうした哲学的とも言える問いに向き合う中で、表面的ではない、深い思考力が育っていきます。
この力は、大人になってから:
- 問題の本質を見抜く力
- 既存の枠にとらわれない発想力
- 複雑な状況を整理する力
として開花します。
育つ力③ 共感力 人の痛みがわかる優しさ
苦しみを経験した人は、他者の苦しみに敏感になります。
不登校を経験した子どもは:
- 学校に行けない人の気持ちがわかる
- マイノリティの立場がわかる
- 「普通」にできない人の辛さがわかる
こうした共感力は、将来:
- 人を思いやれる大人
- 多様性を尊重できる大人
- 弱い立場の人に寄り添える大人
へと成長する土台になります。
育つ力④ レジリエンス 折れない心、立ち直る力
不登校という困難を経験し、それを乗り越えていく過程で、子どもは「レジリエンス(回復力)」を身につけます。
- 苦しくても諦めない力
- 失敗しても立ち上がる力
- 自分なりの方法を見つける力
この力は、人生のどんな場面でも活きる、最強の武器です。
育つ力⑤ 独自性 人と違う道を恐れない強さ
みんなと同じ道を歩まなかった経験は、「人と違っても大丈夫」という自信を育てます。
- 自分らしい選択ができる
- 他人の評価に左右されにくい
- 独自の視点を持てる
こうした独自性は、これからの時代において、最も価値のある資質の一つです。
「幸せでいい」が持つ魔法の力
親の不安は、子どもの不安になる
親が「このままでいいの?」と不安を抱えていると、子どもはそれを敏感に察知します。言葉にしなくても、表情や態度から伝わってしまうのです。
そして子どもは思います。
「やっぱり自分はダメなんだ」
「親を心配させている自分は悪い子なんだ」
「早く学校に行かなきゃいけないのに、できない自分は弱い人間なんだ」
こうした自責の念が積み重なり、ますます前に進めなくなってしまいます。
「幸せでいい」という許可

でも本当は、学校に行かなくても、勉強が遅れても、今日一日、笑顔で過ごせたなら、それでいい。
幸せでいい。
元気に笑って、おいしいご飯を食べて、安心して眠れる—— それだけで、脳も心もちゃんと回復していくのです。
脳科学が証明する「幸せ」の効果
子どもが安心して笑うとき、脳内ではオキシトシンという「愛情・安心ホルモン」が分泌されます。
このホルモンが増えると、
- ストレスホルモン(コルチゾール)が減少
- 前頭前野の働きが活性化
- 「考える力」「やる気」「自己肯定感」が戻ってくる
- 免疫力も向上する
つまり、「幸せでいい」という言葉は、ただの気休めではなく、脳を回復させる科学的根拠のある”魔法の言葉”なのです。
今日から使える「魔法の言葉」
もし子どもが何もできていないように見えても、ぜひこう伝えてあげてください。
「あなたが笑っているだけで、お母さん(お父さん)は幸せだよ」
「学校に行ける行けないは関係ないよ。あなたは大切な存在だよ」
「今日もあなたと一緒にいられて嬉しい」
「無理しなくていいよ。あなたのペースで大丈夫」
この言葉が、お子さんの中で静かに自己信頼を育て、次の一歩を踏み出すエネルギーになります(^^)
不登校経験は、子どもを「面白い大人」にする
「遠回り」ではなく「探検」
不登校の経験は、人生における「遠回り」ではありません。誰も歩いたことのない道を探検する冒険です。
その探検の道には、学校という決められたレールの上では決して出会えない、たくさんの発見があります。
- 家族との深い対話
- 自分の本当の興味との出会い
- 時間をかけて何かに没頭する喜び
- 自分自身の内面との対話
こうした経験の一つひとつが、子どもの世界を少しずつ、でも確実に広げていきます。
立ち止まるからこそ見える景色
急いで走っている時には見えないものが、立ち止まると見えてきます。
- 季節の移り変わり
- 小さな花の美しさ
- 家族の温かさ
- 自分の本当の気持ち
誰かと同じペースで進まなくても、自分の足で歩いた道だからこそ、後から振り返ったときに深い意味を持つと思っています。

娘が不登校をしていた当時、夕方一緒に散歩をしていたときのことです。
「わー!ママ見て!夕日がキレイだよ。空が紫色だ!雲に光が反射してとってもキレイだね。」娘がニコニコとこう言うのです。
何気ない幸せを感じる時間を感じる「いま」が大切だと感じました。
不登校経験者が持つ「強み」
実際に、不登校を経験した人たちからは、こんな声が聞かれます。
「あの時期に自分と向き合ったからこそ、今の自分がある」
「人と違う道を選ぶ勇気を持てるようになった」
「他人の痛みに寄り添える大人になれた」
「常識にとらわれない発想ができるようになった」
不登校の経験は、子どもを、
- 人の痛みに気づける、優しさのある大人に
- 失敗してもまた立ち上がれる、折れない心を持つ大人に
- 他人と違う選択を恐れない、独自の道を歩める大人に
育てていきます。
親ができること
親にできるのは、その探検の旅をそっと見守ること。
地図を手渡すように、「大丈夫、どんな道にも意味があるよ」と伝えてあげてください。
その言葉が、子どもの胸に灯る**”人生のコンパス”**になります。
不登校がもたらす家族の変化
この経験は、親にとっても「成長の時間」
不登校は、子どもだけでなく、親自身も成長する機会です。
この時期、親は、
- 忍耐力を鍛えられる
- 子どもの気持ちに寄り添う共感力が育つ
- 「待つ」ことの大切さを学ぶ
- 柔軟な価値観を持てるようになる
- 本当に大切なものが見えてくる

「うまくいかない時間」こそ、実は家族の絆を深める宝のような時間だと思っています。子供の不登校を経験して、私自身の幸福度もアップしました。
完璧な親でなくていい
そして、覚えておいてほしいのは、あなたは完璧な親である必要はないということです。
- 時には感情的になってしまっても
- 時には不安で押しつぶされそうになっても
- 時には子どもにキツく当たってしまっても
それでもいいんです。

大切なのは、「完璧であること」ではなく、「子どもと一緒に悩み、一緒に成長しようとすること」です。
親が自分を大切にすることの重要性
そして、親自身が自分を大切にすることも、とても重要です。
- 信頼できる人に話を聞いてもらう
- 同じ悩みを持つ親のコミュニティに参加する
- 自分の好きなことをする時間を持つ
- 専門家のサポートを受ける
親が心穏やかでいることが、子どもの安心につながります。
だから、自分を責めず、自分自身も大切にしてください。
今日から始められる5つのステップ
不登校期間を「人生の土台を作る時間」にするために、今日からできることをご紹介します。
ステップ1:「行かなくてもいい」と明確に伝える
まず、お子さんに「学校に行かなくていいよ」とはっきり伝えてください。曖昧な状態が、子どもを最も苦しめます。
「行かなくていい」という明確な許可が、子どもの心を解放し、回復への第一歩になります。
ステップ2:生活リズムを整える
学校に行かなくても、基本的な生活リズムは大切です。
- できる範囲で朝は起きる
- 3食きちんと食べる
- 適度に身体を動かす
- 夜は眠る
このリズムが、脳と心の回復を助けます。
ステップ3:「好き」を深める時間を作る
お子さんが興味を持っていることを、とことん深める時間を作りましょう。
ゲーム、漫画、動画、料理、工作など、何でもいいんです。「夢中になる体験」が、脳を活性化させ、生きる意欲を取り戻させます。
ステップ4:家族の対話の時間を持つ
無理に話を聞き出す必要はありませんが、自然な会話の時間を大切にしてください。
- 一緒に食事をする
- テレビや動画を一緒に見る
- 散歩に出かける
- 何気ない雑談をする
こうした時間が、子どもの心を温めます。

私は、娘が見ていたアニメを見ました。そして、アニメの話題を振ってみて、徐々に一緒にアニメを見るようにしました。
好きなものを一緒に楽しんでくれる人は、「仲間」です。娘にとって私を仲間と認識してもらうことからはじめました。
ステップ5:外部のサポートを活用する
一人で抱え込まず、外部のサポートを活用しましょう。
- スクールカウンセラー
- フリースクール
- 不登校支援団体
- オンラインコミュニティ
- 心療内科や児童精神科
専門家の視点やアドバイスが、新しい道を開くこともあります。
<まとめ>不登校は「終わり」ではなく「新しい始まり」
学校に行けないことは、決して失敗でも後退でもありません。
それは、「自分の生き方を選び直す」チャンスです。
この記事でお伝えしたかったことを、もう一度まとめます。
覚えておいてほしい7つのこと
- 不登校は脳が「生き方」を組み直す大切な時期
- この時間に育つのは、知識だけでなく「人間力」
- 親の「幸せでいい」という言葉が、子どもを回復させる
- 不登校経験は、子どもを「面白い大人」にする
- 親自身も、この経験を通して成長できる
- 焦らず、比べず、今この瞬間を大切にする
- 一人で抱え込まず、サポートを活用する
今、この記事を読んでくださっているあなたは、きっと深い愛情でお子さんのことを考えている方だと思います。
だからこそ、不安になるし、焦るし、苦しいのだと思います。
でも、どうか覚えておいてください。
あなたは一人じゃない。お子さんも、決して止まっているわけじゃない。
今日のこの時間を責めないでください。
今この瞬間も、お子さんの中では、目には見えない成長が静かに進んでいます。
そして、この時間を大切に過ごすことで、いつか必ず、お子さんは再び外の世界へ踏み出していきます。焦らず、比べず、この時間を「成長の種まきの期間」として過ごしていきましょう。
もし、この記事が少しでもあなたの心を軽くできたなら嬉しいです。
一人でも多くの親子が、この困難な時期を「成長の時間」として過ごせますように。
あなたは決して一人ではありません(^^)