子供が学校に行きたがらないとき、多くの親は「甘やかしすぎなのでは?」と自分を責めたり、周囲からそう言われて心を痛めることがあります。私も子供が不登校になった時には、自分のせいなのではと落ち込みました。
しかし、子供とすごしているうちに、不登校の背景には単純な怠けや甘やかしでは説明できない複雑な要因が隠れていることを感じました。
本記事では「不登校=甘やかしすぎ」という誤解を解きながら、子供を支えるために親が知っておきたい知識や心構え、具体的なサポート方法についてわかりやすく解説します。
子供の不登校の現状とその影響
不登校の増加傾向と背景
近年、不登校の子供は年々増加しています。文部科学省の調査によると、小中高すべての段階で不登校の児童生徒数は過去最多を更新し、社会全体でも大きな課題となっています。
その背景には、学業のプレッシャー、いじめ、発達特性、家庭環境の変化、コロナ禍での生活リズムの乱れなど、さまざまな要因が複雑に絡んでいます。さらに近年では、SNSやネット環境による人間関係のトラブル、過度な情報刺激による不安の高まり、家庭の経済的ストレスや親の働き方の変化など、新しい要因も指摘されています。
子供を取り巻く環境が以前よりも多様で複雑になっていることが、不登校増加の背景にあるといえるでしょう。
学校に行かない理由の多様性
不登校の理由は一人ひとり異なります。「勉強についていけない」「友達関係でのトラブル」「先生との相性」「朝起きられない」など表面的な理由もあれば、「気持ちが落ち込みやすい」「人前に出ると強い不安を感じる」といった心理的な背景もあります。
一言で「怠けている」と片付けられるものではなく、その子の状況を丁寧に理解することが必要です。
不登校が子供や家庭に与える影響
不登校が続くと、学習の遅れや進路の選択肢が狭まるなどの影響があります。また、本人は「行けない自分」に自己否定感を抱きやすく、気持ちがさらに落ち込むことも。
家庭内では親の焦りや葛藤が強まり、親子関係がぎくしゃくする場合も少なくありません。そのため、家庭と学校の両面から支えることが大切です。
不登校と「甘やかし」の誤解
なぜ「甘やかしすぎ」と言われやすいのか
世間では「親が厳しくしないから不登校になるのでは?」という偏見が根強くあります。
特に祖父母や周囲の人から「もっと厳しく育てるべき」と指摘され、親が追い込まれるケースも少なくありません。メディアで取り上げられる一部の事例も、こうした誤解を強めてしまうことがあります。
しかし、子供が学校に行けなくなる背景には、単なる親の育て方では片付けられない深刻な要因があるのです。社会的な要因や子供本人の心身の状態が大きく影響しており、家庭だけに責任を押し付けるのは不適切だといえます。

うちの子が不登校になったときも、子供の祖父母はなかなか理解を示してくれませんでした。我が家の場合には別居だったので、不登校中は子供を連れていくことはしていません。
法事で会わなくてはいけない時は、前もって状況を説明しておきました。考え方は違くても、こちらの考え方、今後のことをどう考えているかを話しておいたので、特に何も言われませんでした。
小言を言うのは、心配しているからです。孫を嫌って言っているわけではないので、敵視する必要はないですが、理解が難しい状況であれば距離をおくのもよい方法だと思います。
不登校=甘やかしではない理由
不登校は「甘やかした結果」ではなく、子供が置かれている環境や心理的負担の表れです。甘やかしによって一時的に登校を拒むケースはあるかもしれませんが、多くの場合は本人の努力や意志の問題ではなく、外的・内的要因が大きく関わっています。
「甘やかしすぎ」と決めつけることは、子供や親をさらに追い詰めるだけです。むしろ、子供が安心できる環境をつくりながら段階的に自立を促すことが解決の糸口になります。
医療や教育の専門家も「親の甘やかし」という単純な言葉では片付けられないと指摘しており、支援の在り方を工夫する必要があります。
親の寄り添い方と境界線の大切さ
寄り添うことは大切ですが、過度な介入や「全部やってあげる」ことは子供の自立心を損ないます。親は「支える部分」と「子供自身に任せる部分」を見極めることが重要です。
境界線を意識することで、子供も安心して自分のペースで成長していけます。境界線を持ちながらも「味方でいる」という姿勢を崩さないことが、親子双方にとって安心感につながります。
不登校のタイプを理解する
不安・ストレス起因タイプ(心の不調)
強い不安感や気分の落ち込みが原因で登校できないタイプです。朝になると腹痛や頭痛を訴えることも多く、心身のSOSとして現れます。この場合は無理に登校を促すのではなく、休養や専門的な支援が必要になります。
さらに、症状が長引く場合には医療機関での診察や心理カウンセリングが有効なことも多く、家庭と専門家が連携して対応することが望まれます。
環境起因タイプ(学校や人間関係)
いじめや友人関係のトラブル、先生との関係性など、学校環境が原因となる場合です。環境が改善されれば登校できるケースもあり、学校との協力体制が欠かせません。
学校側が柔軟に対応してくれることで安心感が増し、子供が少しずつ学校に戻れることもあります。例えば座席の配置換えや登校時間の調整など、小さな工夫が大きな効果をもたらすこともあります。
依存や甘えが強く見えるタイプ(誤解されやすい)
一見「親に甘えているだけ」と見えるケースもあります。しかし背景には自己肯定感の低さや不安が隠れていることが多く、単に「甘やかし」とは言い切れません。心理的な安心感を得ることで、少しずつ自立に向かうことができます。
このタイプは特に誤解されやすく、親が「突き放す」か「抱え込みすぎる」かの極端な対応をしてしまうと逆効果になる場合があります。バランスよく関わることで、本人が自分の力で一歩を踏み出すきっかけを得やすくなります。

うちの子は、規律性調節障害で朝起きられなくなるタイプでした。規律性の子は年々増えており、学校側も対応に慣れてきている印象です。
まずは、わが子がどのタイプなのか観察すると、その後の対応につなげやすいです。
親が知るべきサポート方法
時間をかけた理解がカギ
不登校は短期間で解決する問題ではありません。焦らず、時間をかけて子供の気持ちを理解する姿勢が大切です。親が「待つ」ことも大きなサポートになります。
時には一歩引いて子供のペースを尊重し、言葉にならないサインを感じ取ることも求められます。小さな変化に気づき、焦らず認めてあげることが、子供の安心につながります。
学校との関係をどう築くか
担任やスクールカウンセラーと定期的に連絡を取り、子供の状況を共有することが重要です。学校との協力体制が整うことで、復学のきっかけを作りやすくなります。
また、家庭での様子を伝えるだけでなく、学校からの情報を家庭にフィードバックすることで、子供にとってよりよい環境を整えることができます。学校に無理に行かせるのではなく「戻りやすい雰囲気」をつくることが、結果として子供の安心感につながります。
子供の自立を促す接し方
「全部やってあげる」のではなく、できることは本人に任せることが大切です。小さな成功体験を積み重ねることで、自信を取り戻しやすくなります。
例えば朝起きる、身支度を整える、短時間でも勉強に取り組むなど日常の中での小さなチャレンジを積み重ねることが大切です。親はその過程を見守り、できたときにはしっかり褒めることで、子供の自己肯定感を育てられます。
実践的なアドバイス
ネットや知恵袋での情報収集との向き合い方
インターネットには不登校に関する体験談やアドバイスが多くあります。参考になる一方で、不安をあおる情報もあるため、取捨選択が必要です。信頼できる情報源を活用しましょう。
また、掲示板やSNSでは同じ境遇の親の声を聞けることもありますが、過度に依存すると逆に不安が強くなることもあります。情報は「参考」として取り入れ、最終的な判断は家庭や専門家と相談して行うのが安心です。
「いい加減にしろ」ではなく「一緒に考える」姿勢
感情的に叱るのではなく、「どうしたら学校に行けそうかな?」と一緒に考える姿勢が大切です。子供にとって「親が味方でいてくれる」と感じられることが、安心につながります。
特に思春期の子供は親の言葉に敏感です。短い言葉であっても「大丈夫だよ」「一緒に考えよう」と伝えるだけで、気持ちが落ち着くこともあります。親が先に答えを出すのではなく、子供自身が考える時間を待つ姿勢も重要です。
子供が納得できる小さな一歩の促し方
いきなり登校を目指すのではなく、まずは家の中での生活リズムを整える、家庭学習を少しずつ進めるなど、小さな一歩から始めることが現実的です。
例えば、朝決まった時間に起きる、近所に散歩に出かける、オンライン学習を数分取り入れるなどの工夫が考えられます。こうした小さな成功体験を積み重ねることで「できた!」という自信が育ち、登校への意欲につながります。
すぐにできる登校サポート
家庭でできるサポート法
規則正しい生活習慣を一緒に整え、子供が安心して過ごせる家庭環境をつくることが基本です。叱るのではなく、認める言葉を多くかけることで自己肯定感が育ちます。
例えば、一緒に朝食をとる、毎日同じ時間に就寝する、少しの家事を任せて達成感を味わわせるなど、日常の中でできる工夫が役立ちます。こうした積み重ねが子供の安心感を育て、登校への第一歩につながります。
学校・教育機関との連携
学校や教育委員会、フリースクールなど外部機関と連携することで、選択肢を広げることができます。家庭だけで抱え込まないことが重要です。
担任やスクールカウンセラーと定期的に情報交換を行うほか、スクールソーシャルワーカーに相談することも効果的です。学校側と協力して「少しずつ学校に戻れる環境づくり」を意識することで、子供の不安も和らぎやすくなります。
地域・専門機関の支援を受ける方法
地域の子育て支援センターや専門機関に相談することで、専門的なアドバイスや居場所を見つけることができます。親子ともに安心して頼れる場を活用しましょう。
自治体が提供している学習支援教室や、不登校児童向けの居場所づくり事業なども増えており、家庭と学校以外の第三の場を見つけることが、子供の気持ちをほぐす大きな助けとなります。
親の心構えとマインドセット
自分自身のストレスケアと振り返り
親自身が疲れ切ってしまうと、子供を支えることが難しくなります。趣味や休養を意識的に取り入れ、心身のバランスを整えましょう。
さらに、自分の感情や言動を振り返る習慣を持つことで、無意識に子供へ与えているプレッシャーに気づけることもあります。定期的に気持ちを整理する時間を取り、必要に応じて友人や専門家に相談することも、長期的なサポートには欠かせません。
「甘やかし」ではなく理解と伴走
不登校は「親が甘やかしたから起こるもの」ではありません。理解と伴走があってこそ、子供は安心して成長のプロセスを歩めます。親が「見守る」と「突き放す」のバランスを意識しながら、子供に寄り添うことが重要です。
時には何も言わずに隣に座るだけでも、子供にとって大きな支えとなります。無理に解決策を押し付けるのではなく、本人が自分のペースで考え、動き出せるような環境を整えることが大切です。

わたしは学校を休むことについては、子供に何か言ったことはありません。ただ、子供の状況を親から学校に伝えた上で、放課後子供から担任の先生に電話をかけさせ、状況を伝えるよう約束していました。
体調や気持ちが落ち着いている時は、放課後に職員室に行って課題や学校のプリントをもらってきたり。
子供のペースは守りながら、自分の責任は自分で取ること、学校との接点は完全には絶たないことを意識していました。
(担任の先生は、本当に大変だったかと思います。ご対応いただき、感謝の気持ちでいっぱいです。)
子供の未来を支えるための支援ネットワークづくり
家庭、学校、地域、専門機関が連携し、子供を支えるネットワークを広げていくことが、未来への力となります。親一人で抱え込まず、支援の輪を活用する姿勢が大切です。
地域の支援グループやオンラインコミュニティを活用することで、同じ経験を持つ親との交流ができ、孤立感を軽減できます。多様な人とのつながりを持つことは、親自身の安心感にもつながり、結果的に子供の未来をより豊かに支える基盤となります。